空気層は狭い方がいい?広い方がいい?

空気層は狭い方がいい?広い方がいい?

二重サッシ

こんにちは!環境工学だいすき瀧澤です。この間、家をリフォームした友人から「内窓つけたんだけど、内窓付ける位置について聞かれて、どう判断したらいいか分からなくて、業者の人にどうした方がいいんですか?って聞いたら、空気層は狭い方が断熱効果が高いので、既存のサッシに近づけた方がいいですよって言われたんだけど、広い方が断熱されそうなイメージだから驚いたんだ。実際そうなの?」と質問されました(長い)。わい、建築士だもんね。かっこよく答えられそうな質問でしたが「う、うん…そうらしいよ( ^ω^)」としか答えられませんでした。(薄っぺらな知識で回答して、「何で?」「何で?」の連続技が来たら勝てないと思ったので。)

でも!個人的にすっごく知りたくなったので、インターネット検索していたところ、根拠になりそうな文献を見つけました!こちらのコラムは「空気層を利用した断熱法の実験的研究(室蘭工業大学研究報告)」の解説がメインとなります。

本題の前に基本(理科)のおさらい!

断熱のおはなしですから「熱」が物理学的にどんな代物か理解していないとお話になりません。以下、基本的な熱のキーワードをまとめます。

・「熱」と「温度」を区別して考える
「温度」は原子や分子の乱雑な運動エネルギーの「平均値」である
「熱」は温度差(高→低)によってエネルギーが伝達される「過程」である
・なお、温度差がない状態を「熱平衡」という

熱は物体ではないんですね。分かりづらいのでここから先は固有名詞として使っていきたいと思います。ここで重要なのは熱が温度差によって伝達されるということと、熱平衡になるまで高温から低温に移動するということです。ここまでご理解いただけたら次は熱が伝わる方法についてです。

・熱の伝達は「ふく射(放射)」「熱伝導」「対流」に分けて考える。
「ふく射(放射)」は、電磁波(主に赤外線)
「熱伝導」は、物質(固体→液体→気体の順に伝わりにくくなる)
対流は、流体(主に気体)

この中で特に空気層に関係が深いのが「対流」なので、対流の種類についても触れておきます。

・対流は「層流」と「乱流」に分けられる
「層流(そうりゅう)」は、規則正しい流れ(ひとつの大きな渦)
「乱流(らんりゅう)」は、不規則な流れ(いくつもの小さな渦)

層流は校則とか守るいいやつ、乱流は校則とか破る自由(わるい)な奴と覚えてください。

(参考)個人的に分かりやすかったサイトの引用こちらは私がメモ的に引用させてもらったものなので飛ばしてください。

空気の流れがなく、分子レベルで熱を拡散する現象を分子拡散、空気が動くことで熱を拡散する現象を乱流拡散と言います。そして、分子拡散と乱流拡散ではまるでスピードが違うのです。
我々が「大気」と呼んでいる部分は、ほとんどのところで乱流拡散によって熱が運ばれています。しかし、地表面など2次元面によって空気の流れが制限されているところでは、面に垂直方向に動くことができませんから、その方向の熱伝導は分子拡散に頼らざるを得ません。
直射日光下の車の屋根の上に、ゆらゆら揺ら揺らぐ数mmの薄い層ができますが、これが分子拡散による熱境界層です。この層が5mmあると300W/m^2の熱を大気に伝えるのに、表面の温度は大気より60度高くならなければなりません。この場合、大気の温度を30度とすれば、車の屋根の温度は90度ということになります。荒っぽい計算ですが、これでなぜ車がこんなに熱くなるのかおわかりいただけると思います。
この熱境界層の外側(大気側)では空気は比較的自由に動けますので、桁違いに熱輸送効率が上がって、ほとんど温度は一様になりますつまり、温度が高いのは、表面から数mmの薄い層だけなのです。
(引用終了)

空気層を利用した断熱法の実験的研究

緒言

いよいよ本題です。この実験は「空気って発泡ポリエチレンと同じ熱伝導率だけど、空気ってタダだし、断熱に使えたら最強じゃね?」という思惑を立証することが目的です。

「発泡ポリエチレン」は、無数の空気の泡を含んだ断熱材です。
「熱伝導率」は、熱伝導のしやすさで、数値が高いほど伝わりやすい、つまり断熱性が悪いと言えます。

物質の熱伝導率к [W/m・K]

物質温度熱伝導率
100.582
02.2
アルミニウム0236
083.5
0403
0428
乾燥空気00.0241
乾燥木材00.15~0.25
ガラス常温0.55~0.75
引用元:https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/netuworld/seisitu/ritu.html

実験装置はこんな感じ

実験装置

分かりづらかったので赤の引き出し線で追記しました。片方から冷やされて(「C」(Cold))片方から暖められる(「H」(Heat))空間を103mm×940mmの大きさで二部屋作ってみた。といった感じです。「b」(「H」からの仕切り板の距離)が重要です。「C」「H」「b」の位置関係をイメージできたら、実験開始です。いぇい!

熱源の表面にアルミ泊を貼ってみた

アルミ泊を貼ってみた

文献には、熱源(「C」「H」)に何も貼っていない時を「BLACK」、アルミ泊を貼っている時を「WHITE」と表記しています。何も貼っていない時は全熱量の内、ふく射(放射)が60~70%で対流が30~40%。アルミ泊を貼っているときはふく射(放射)は3~5%でほぼ対流のみだったらしいです。これが遮熱の考えですね。聞いたことがあるかもしれませんが「Low-Eガラス」が代表的な製品例です。

「遮熱」は、熱の移動のうち「ふく射(放射)」を防ぐ意味で用いられる。
「Low-Eガラス」は、「ふく射(放射)」による熱の進入を防ぐ為に、電磁波の内、「赤外線(ストーブの近くとかにいる目に見えないけど熱いやつ)」を反射させる特殊被膜を施したガラス。

電磁波について分かりやすい解説があったのでご紹介しておきます。

部屋の中に仕切り板を置いてみた

実験装置のイメージが薄れてきたころだと思いますのでもう一度画像をご覧ください。

実験装置

低温壁と高温壁の間に巾103mmの空間があります。この空間は現在、熱平衡になっています。温かさが冷たさに奪われてぬるま湯になっている状態です。間に1枚仕切り板を設け、空気の状態を観察します。これから「b」を連発するので「b」の位置を覚えておいてください。

空気の流れ(矢印)

パターンは4種類あります。

・「(a)」は、b=20mm
・「(b)」は、b=40mmと60mm
・「(c)」は、b=80mm
・「(d)」は、仕切り板のない状態

補足説明ですが、(b)はb=40mmの時とb=60mmの時、各空気層の対流状態がほぼ同じ状態なので写真がひとまとめになってます。写真はb=40mmの時、b=60mmはこれをひっくり返したのと同じだからイメージしてねメンゴメンゴってことですね。

では図の解説です。(a)を見てください。結果的に断熱性能の高かったのはこの(a)です。層流と乱流を思い出してください。高温壁側(図の左側)は上から下にぐるっと1つの円があります。これが層流です。反して、低温壁側はぐるぐるといくつもの円があります。これが乱流です。

乱流は断熱したい私たちにとっては悪い奴です。熱の移動の高い→低いの法則に従って渦ができています。矢印が→に向いた瞬間熱が冷たい方に奪われているということ。渦が多い(乱流する)ほどその箇所が多いということ。だから乱流って私たちにとって悪い状態と言えます。

ん?なんかおかしくないと思われた賢い方へ

なんで(a)が一番なの?(c)は逆向きになっただけで、断熱効果は同じになるはずじゃ?と思われた方、大体そんなイメージでいいようです。これは実験なので、色んなパターンを試したなかで、数値の微妙な差によって(a)が勝ったというだけです。下の図はBLACKで温度差30℃の時の表です。

結果を数値で見る

赤い塗りつぶしは(a)も(c)も一緒なんですが、青い塗りつぶしのところで(a)が微妙に有利なんですよね。「Cell.H」は高温壁側、「Cell.C」は低温壁側という意味です。ここでいうCellは個室って意味です。

・「Ra」は、レイリー数といって、層流と乱流の状態を比較するときによく使われる。数値が大きくなるほど自然対流が起きやすく、層流から乱流状態になる。
・「L/D」は、Cell断面のアスペクト比(長さ/奥行)

結言

結言

今回この記事を書く目的となった疑問は「空気層は狭い方がいい?広い方がいい?」でした。結論は「狭い(アスペクト比L/Dが大きい)方が、対流が層流になりやすく、断熱効果が高いと言える。」です。じゃあいくつがいいの?というと、この実験装置の場合、仕切り板が一枚の時は20mm、二枚の時は左右均等に10mmがいいと言えます。ただし、この数値が全ての空気層にそのまま当てはめられるわけではありません。

例えば窓は、可視光線を通すために透明になっています。少なからず「ふく射(放射)」の影響を受けるということです。実験装置と状況が異なるため、bの数値は変わっても文句は言えません。その辺はサッシメーカーが自社で実験して、一番いい値で製造しているのでご安心ください。

対流対策はメーカーにお任せするとして、私たちのようなユーザーが判断するとしたら空気層の中身に注目してください。「熱伝導」は圧力に比例します。真空(気圧が低い)に近いほど、「熱伝導」は低くなり、抵抗力が上がったと言えます。これもまた分子レベルのお話になります。そこまで知りたい!って人は恐らく同業者さんだと思いますので、分かりやすい解説ページをご紹介して終わりたいと思います(笑)
「ふく射(放射)」については、Low-Eガラスで赤外線を反射させてやればOKです。少なくともサッシ選びにLow-Eは必須と言えます。ただし、冬厳しい地域では太陽光の熱が欲しいので、上手いことやってください。(これは施主さんではなく設計士さん向けに言ってます。パッシブってやつです。)

いやいや終わらせないでよ!窓の話をするなら、サッシ枠だって重要でしょ!?だってほら、アルミとか樹脂とか色々あるじゃん!って方、お前絶対建築学生だろ!(笑)。別記事でサッシについて書くので許してください( ^ω^)

瀧澤
satsukikoumuten

「在り続ける家」をつくる
皐工務店株式会社

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瀧澤洸太 について

『身近に在り続ける存在』 私の仕事は、皐工務店を知ってもらったり、家を考えたり、実際につくったり、床下に潜って点検をしたり“住宅に関わること全て”です。お客様と初めてお会いしてからお引渡しするまでの間は長いようで短いですが、工務店としてお客様との関係は一生です。“遠くで見守って、心は近くにいる。”お客様やご家族様に安心してもらえる、そんな存在になりたいです。